#4 Webtoon事業は儲かるのか? Minto(元クオン)水野氏が考えるクリエイターエコノミーの世界的潮流

#4 Webtoon事業は儲かるのか? Minto(元クオン)水野氏が考えるクリエイターエコノミーの世界的潮流
📕Summary
「スタートアップ オフレコ対談」は、XTech Venturesの代表手嶋とゲストの方をお呼びして対談する番組です。今回は日本をリードするクリエイターエコノミー企業、株式会社クオン代表の水野氏との"オフレコ"対談です。
クオンはキャラクターの開発、チャットプラットフォーマーへスタンプを提供しています。チャットアプリで起業するも、LINEの出現によってピボットを強いられたのち、どのようにスタンプのダウンロード数世界一を誇る事業に行き着いたのでしょうか。そして、後半はクオンとwwwaapの合併、「株式会社Minto」の設立の秘話をぶっちゃけていただいています。
🔊Speaker
・手嶋 浩己
Xアカウント [@tessy11])
XTech Ventures 代表パートナー
・水野 和寛 氏
Xアカウント[@mizunoq]
Minto(元クオン) 代表取締役
対談内容
※記事の内容は2021年10月時点のものです。
wwwaap社と合併し、Mintoが生まれた背景
手嶋:今回クオンとwwwaap社が合併してMinto社になったと。キャラクター業界、IP業界の未上場スタートアップの2社。ただ、クオンについて知っている人はいても、wwwaapさんは、実は、ほぼ調達しておらず、事業会社から1社だけですよね?
水野:はい。
手嶋:VCとかから調達せずに急成長していた会社なので、知る人ぞ知る会社なので。そこの紹介くらいからやりたいんですけど。実は、エピソードがあって。僕は、2年前に水野さんにwwwaapの中川さんを紹介してもらっているんですよ。僕は、水野さんによく起業家を紹介してもらって。ステルスですけど、最近水野さんに紹介してもらった起業家に1社、僕のファンドから投資しているので。
水野:そうですね。
手嶋:実は、水野さんは僕によく紹介してくれるんですよ。「最近、いい人います?」と言ったら「いやあ、実はいるんですよ。wwwaap知っていますか?めっちゃ成長していますよ」と言って「じゃあ、紹介してください」と中川さんを紹介してもらったんですよね。
水野:そうですね。
手嶋:それが2年前くらい。中川さんと飯を食いながら話していたんですけど、中川さんが、VCとかから調達する気がなさすぎて。
水野:そうそう(笑)。
手嶋:IPOとかも目指す気がなさすぎて。これは、そういう方針だったらぜんぜんいいんじゃないですかみたいな話で終わったという感じですけど。今回、そのwwwaapがクオンと合併。正直、僕はできるのであれば、あのときは投資をしたかったです。中川さんにはその気が一切なくて。
水野:いや、でも、手嶋さんに紹介するときは、たぶん、中川さんも、そういった気持ちに、ちょっと、一回なりかけて、VCさんの話を聞いてみたいなとなって。僕も手嶋さんに紹介しましたけど。結局、そのときも、VCさんから調達しなかったですけどね。
クリエイターのエージェントで日本で一番大きいwwwaap社
手嶋:たしかにね。簡単にwwwaapの紹介をしてもらってもいいですか?
水野:分かりました。エンタメの業界でけっこうコアなジャンルなので、知っている人は知っているんですけれども。SNS漫画やアニメを中心にしたSNSのクリエイターのエージェントでは、日本で一番大きい会社です。
例えば、YouTubeだったらUUUMさんみたいなエージェントさんがいますけど。TwitterとかInstagramで、漫画とかアニメのコンテンツをつくっているクリエイターを束ねている会社ですね。日本で一番大きいです。
手嶋:クオンは、IPを自分たちで、インハウスで生み出しているんだけど。wwwaapは、外部のクリエイターをネットワーク化しているということですね。
水野:そうです。
手嶋:主に、漫画イラストレーター、マンガ家。
水野:そうですね。
手嶋:Twitter漫画家とか、インスタ漫画家とか。
水野:そうです。
手嶋:そのジャンルのマネタイズをはじめたのがwwwaapという感じですよね?
水野:そうですね。このジャンルだったら、完全にwwwaapが一強と言っちゃっていいと思うんですけど。ネットワークしているクリエイターのフォロワー数も2500万くらいいますし。今も250人から300人くらいのクリエイターと、何かしら仕事をしているという状態なので。
そのジャンルって、ありそうで参入できていないというところに対して、一人勝ちと言っちゃうとあれですけど、うまく伸ばしているなというのが印象です。
手嶋:ここからメインストリームに。たぶん、あとから話しますけど、NFTとかの文脈の中で、この会社が日本のスタートアップ業界でもど真ん中になってくる可能性がぜんぜんあるのかなと、僕は思っているんですけど。クオンとwwwaapが合併しようかなというきっかけや時間軸、どういう話し合いの中で合併していくことになったんですか?
統合に向けての具体的なきっかけや話し合いの状況
水野:元々、クリエイターを軸にした事業をつくっているというところでは、広い意味では同じなんですけど。クオンは、元々、自社にクリエイターを雇用し、スタジオ化して、そこでコンテンツをつくっていくというやり方ですし。
wwwaapは、クリエイターネットワークで仕事をつくっていくやり方。あとは、ビジネスモデルも、僕らはBtoCで、どちらかというと、直接エンドユーザーさん向けに事業をつくっていくのに対して、wwwaap側はBtoBで、どちらかというと、広告主さんの広告でクリエイターさんのコンテンツを活用するというようなやり方だったので。
広い意味では、見えている世界は同じなんですけど、ビジネスモデルとか、やり方は、けっこう違って。3年、4年くらい前から知り合いではあるのですが、お互いがお互いの会社をいつか買収してやろうみたいな、冗談半分でそういったことを言っているくらい(笑)。
お互いが持っていないものを、お互いが持っていると認識していて。いずれにしても、クオン側もwwwaap側の持っているものを手にしなくちゃいけないし、wwwaap側もBtoBだけじゃなくてBtoCのプロデュース能力を手に入れなくちゃいけないというのが、この数年間ずっとあったので。事業も、この1、2年で、クオン側がBtoBをやり出して、wwwaap側がBtoCをやり出して、だんだん被ってきたというような感じではありましたよね。
手嶋:スタートアップ業界とはいえ、今の話くらいでいくと、そういうつかず離れずの関係ってよくあると思うんですよね。具体的に踏み込んだのは水野さんのほうからなんですか?
水野:そうですね。最初に僕のほうから声をかけました。wwwaapがすごくうまくやっているTwitterさんとの取り組みとか、Instagramを使った漫画の取り組みとか。僕らもそこに1、2年くらいけっこうコミットして、いろいろとBtoBをやってみたんですけど、やってみたもののなかなか難しいなと思うところもあって。
これにずっと時間をかけてやっていると、日本の中での戦いだったらこれで良いけど、グローバルなプレイヤーが出てきている中で、時間的に絶対に勝てないなというのがあり。
ある日、ちょうど2人で飯を食う飲み会のタイミングがあったので、そこで経営統合「今までは冗談で言っていましたけど、真面目に一回議論してみません?」みたいなことを言ったのがきっかけですかね。
手嶋:水野さんは、行く前にストーリーをかなり頭に描いて、今日は言うぞと思っていったんですか?
水野:そうですね。言うのは決めていて。ただ、具体的にどういう話をするかみたいなところまでは、そんなにめちゃめちゃ決めていなかったですけど。ただ、一緒にやりたいということを濁してもしょうがないので。そこは、ストレートに、プロポーズみたいな感じで伝えましたね(笑)。
手嶋:なるほど。僕も当事者として関わっていたんですけど、スニーカーダンクとモノカブが統合したんですけど。スキームはちょっと違うと思うんですけど、ケースとしてはおそらく近いかなと。より大きいものを目指すために、未上場の2社が合併するということ。
そのときに、僕もTwitterに書いたんですけど、やっぱり、起業家としてのプライドが邪魔をすることがあるなと。未上場企業の統合が成り立たないのは、合理性は絶対にあるけど、俺がトップだというプライドが最終的にはネックになって実現しないことがある。
それは、別に悪いことではなくて。事実として、たぶん、そういうことなんだなと僕は理解している。プライドがあるのは悪いことではないので。ただ、そういうことだなと理解しています。
未上場スタートアップ統合の際の、合併比率や代表決定の経緯
手嶋:今回、スキームでいくと、水野さんが代表で、中川さんは取締役になるということで。ある種、水野さんに代表を譲っているわけですよね。
そこらへんの話し合いの状況としてよくあるのは、共同代表。ただ、たしかに、最初はそれで合併する手段としては良いかもしれないけど、結局どっちがリーダーシップをとるのかという話になりがちですし。
形だけの代表が2人いるというのも良くないなと思うんですけど。ここらへんは、リリースを見て、潔いなと、僕は思ったんですよね。そこらへんの話し合いとか、合併比率を決めていく過程とか、そういう話はどんな感じだったんですか?
水野:そうですね。それでいくと、wwwaapは、中川と高橋という2名が共同代表でやっていて。中川さんが創業者ではあるんですけど。特にBtoBの事業を牽引した高橋さんが、1年前か、2年前くらいから共同代表になっているので。
誰が代表をやるんだというときに、まさに手嶋さんがおっしゃったように「共同代表にするなら2人なの?3人なの?」というふうになって、責任が明確にならないなというのがあって。3人で話して、今後、誰が最後に責任をとれるかというのをはっきりさせるために。そこは、どちらかというと合理的に僕が代表をやるべきだろうという話で。僕が立候補したというよりは、3人で話してそうなりました。
あとは、取締役でいくと、クオン側からは小川が非常勤で入りますけど。実際は、水野、高橋、中川の3名がメインで取締役をやっていくということを考えると、僕が代表ではありつつ、中川、高橋の2名が取締役として支える形になるので。そのバランスの形で最初、スタートしたほうがいいんじゃないかと。
どっちかというと、僕が全部決めるというような構造にもなっていないので。そこは、そんなに時間はかからずにすっと決まった感じはありますね。
手嶋:中川さんと高橋さんっておいくつでしたっけ?
水野:30代中盤で、高橋のほうが年上ですね。
手嶋:なるほど。そういう意味だと10歳くらい違うんですけど。そこは、ぶっちゃけ、水野さんのほうが経験豊富みたいなことが、そこらへんは決めやすかったみたいなところはあるんですか?
水野:もちろん、経験値で、経験がある人が代表というのは、日本的な感じだとそれはあるかもしれないですけど。どっちかというと、事業を伸ばすときに代表が誰であるべきかということを、僕も考えてはいるので。
経験があるというよりは、今は少なくとも僕が代表をやったほうがいいよねという形で、スタートに関しては責任をもってやりますという形で。今後、変わる可能性もありますし。いきなり、代表が変わりますと、最初から宣言する気もないですけど。
事業のフェーズによって、取締役とか、責任者というのは、有機的に変わっていくべきだというふうに僕は思っていますし、wwwaap側の取締役2名も思っていたというところがあったので。お互いのプライドみたいなものも、まさにあって。未上場のベンチャーだと、そこがけっこう難しい部分かなという気はするんですけど。そこに関しては、たぶん、周りが思っているほど、時間がかかったとかはなかったです。
手嶋:なるほど。統合後、水野、中川、高橋の役割分担はどうなるんですか? 小川さんは非常勤だと思うんですけど。常勤の3人は、どういう役割分担なんですか?
水野:そうですね。今やっている事業でいくと、いわゆるコンテンツ、キャラクターを使った広告向けのソリューションみたいな事業は、高橋さんがずっと伸ばしているので、引き続き、高橋さんがやりつつ。
IPの事業、キャラクターのライセンスとか、コンテンツビジネスみたいなところは、元々、wwwaap側でいくと中川さん、クオン側でいくと水野がやっていたんですけど、そこは中川さんに寄せていって。
自分は、NFTとか新しい事業領域をもうちょっと開拓していくほうに時間を使っていこうかなというような役割分担をざっくりと考えていますかね。
手嶋:たしかに、元々、合併する前の会社をそれぞれ担当したままだと、合併する意味もそんなにないですよね。
水野:そうなんですよ。
手嶋:オーバーラップして担当していったほうがいいですもんね。
水野:なので、オーバーラップ感をどうつくっていくかというところで、シナジーをどうつくっていくかだと思っているので。重ならない事業はもちろんあるんですけど。重なる事業をけっこう意識的につくっていこうという動きは、現時点では、もう、しはじめているところはありますね。
手嶋:いわゆる法人としても一つになるんですよね?
水野:そうです。
手嶋:オフィスはどこかに移転するんですか?
水野:そうですね。一応、1月に移転する予定で。まだ発表していないのですけど、1箇所になります。
手嶋:一本化するという予定ということですね。
水野:そうです。
手嶋:企業カルチャーは似ているんですか?
水野:クリエイターを軸にしているカルチャーという意味では、大枠では似ているんですけど。やっぱり、そうは言っても、広告の事業がメインだった会社と、どっちかというとスタジオ事業がメインだった会社なので、そこはまだまだ企業カルチャーの合わせ込みは必要かなと思っていて。まだこれからという感じですね。
手嶋:たしかに、wwwaapは、どちらかというと営業とかに強みがあるわけですよね。
水野:そうですね。
手嶋:なるほど。そこは、経営陣の腕の見せどころのポイントですね。
水野:そうですね。逆に、お互い、そこが足りないから合併しているので。そこがうまくバランスをとれないようだと、逆に経営陣としての力量がという話になると思います。
合併に関するステークホルダーの反応と対応方法
手嶋:また、合併なので、いろんなステークホルダーを巻き込むので、BtoBのお客さんとかには、随時、窓口の方が説明していくんだと思うんですけど。株主とか、従業員ということでいくと、どういう反応だったのか、ちょっと聞きたくて。
まず、株主でいくと、両極端ですよね。クオンは、ひたすらVCがたくさんいるという状況ですよね。今まで、水野さんも苦労してここまできたので、資本政策も苦労されながらつくってきた。とにかく、株主の方がたくさんいらっしゃいますという状況で。
wwwaapは、ほぼほぼ自分たちで持っていて。事業会社1社だけ、創業時に投資をしてもらっていますという感じで。主に、旧クオンの株主の方に説明をしなきゃいけない。これは、一定の合併比率を決めたあとに相談にいっているんだと思うんですけど。どういう反応だったんですか? 単純に言うと、株主の持分は薄まるわけですよね?
水野:そうですね。
手嶋:どういう反応だったのか。
水野:そもそも、統合って、たぶん、僕に限らず、やったことがある人はほとんどいないので。最初、何から話そうかなというのがけっこう難しくて(笑)。ふわっとしすぎた状態で話しても、あまりにもちょっと質問ばかりになっちゃうので。ある程度、固めてからかなと思いながらも。僕のほうから最初プロポーズして、2週間くらいで、ある程度、いいよみたいな返事をwwwaap側からありがたくもらったんですね。
ただ、株主に説明するためには、いいよと言った裏付けとか、もちろん比率もありますし、今後、何をやっていくかみたいなことはちゃんと説明しなくちゃいけないなというのがあって。けっこう、丁寧に、説明会みたいなものを。
結局、合併の最終意思決定をするまでに、4回くらいやって。その都度、情報をアップデートしながら、最初はこんなことを考えていますというところのスライドをつくって、説明をして、質疑応答をしつつ。その中で、課題を拾って、それを解決しながらwwwaap側とも話をしながらというのを、1週間、2週間単位くらいで4回くらい、ミーティングをして詰めていったという感じなので。それでいくと、やり方が分からなかったので、自分が考えるスタンダードのやり方で丁寧にやっていったつもりではありますかね。
手嶋:水野さんなので、たぶん、株主ともいい関係を築きながらここまできているので、そのシーンの想像も、ある程度、僕はイメージがつくんですけど。明確に反対意見というのはなくて。宿題みたいなものはもらうけど、明確な「いやいや、困るよ」みたいなものは、特になかったという感じですか?
水野:そうですね。もちろん、合併の比率とか、具体的に財務的な連帯をどうするんだとか、そういったところは、細々たくさんあったんですけど。そのへんもひっくるめて、逆に、株主さんのほうから、なるほどなという課題をたくさんもらったので。
それを解決していくうちに、合併に向けての機運がどんどん高まっていったという感じはあったかなという印象があるので。めちゃめちゃ揉めたみたいなことはなかったですかね。
手嶋:対wwwaapでも、対株主でもいいんですけど、とはいえ、相対的な意味で紛糾したなというテーマはあるんですか?
水野:合併するので、両方、あまり具体的な数字はあれですけど、2桁億以上の時価総額の会社が合併するので、最終着地のバリエーションがどうなるかとか、その次の調達のしやすさやしにくさみたいなところとか。
手嶋:なるほど。
水野:でも、それは、どっちかというと、僕ら側の対株主のほうで、当然ながら、株主もベンチャーキャピタルの皆さんは、イグジットをどうしていくかというところともセットで、今回の話も考えているので。その視点での質問が一番多かったかなという気はします。
手嶋:でも、そうなると、今回、合併新会社の上場時の目線みたいなものは示したわけですね。
水野:そうですね。なので、そこを示しながら。資金調達をガチガチでやるほどの資料じゃないですけど、それなりの資料はしっかりとつくって説明をしたつもりです。
手嶋:ここでぜんぜん言う必要はないですけど、これくらいでの上場を目指しますみたいなことも、ある種、言わざるを得ないし、言う責任があるプロセスだったと思うんですけど。それは、水野さんにとっては、比較的、緊張感がある数字なんですか? 「これを目指さなきゃな。頑張るぞ」みたいな。
水野:事業計画を書くときって、いつもポジティブなので(笑)。そこで言うと、いけるかなと思って書いている数字ではありますね。
手嶋:上場でいくと「合併したのでけっこう先にします」ということか、「適切なタイミングでいけるときにいきますよ」ということだと、どっちのスタンスに近いんですか?
水野:うーん……。めちゃめちゃ先って形じゃないですけど、直近で来年とかにするかというほどでもない。ちょうど真ん中くらいのタイミング。
手嶋:なるほど。分かりました。
水野:やっぱり、合併したところでのシナジーがどのくらい出せるかというところは、この1年間くらいで見極めたいよねというところがお互いにあって。
もちろん、シナジーがあればあるほど、事業の幅を広げていけるということで。そのタイミングで、当然ながら、IPOをするタイミングも。準備はしますけど、どこがいいかは考えたいよねというような話をしていますね。
手嶋:それぞれ、会社の人数は50人ずつくらいですか?
水野:いや、そんなにいないですよ。全部足して、海外を合わせても、70、80人くらいじゃないですかね。
手嶋:合併したあとですか?
水野:はい。なので、人数は、お互い、そんなにめちゃくちゃいる感じでもないです。
手嶋:でも、それくらいだと、シナジーでいくと、やっぱり経営人材が集積するシナジーで大きそうな気がしますね。僕からすると。
水野:そうですね。
手嶋:今、事業が足し算となって足されていくというよりは、水野さんは、今まで1人で考えざるを得なかったこととか、彼らは2人で考えざるを得なかったことが、3人で議論することによって、たぶん、ぜんぜん違う議論が生まれるので。
水野:そうですね。
手嶋:あと、3人で役割分担をすれば、やれることがかなり大きいと思うので。それは、けっこう大きそうな気がしますね。
水野:僕らも今、合併、経営統合が決まってから2カ月くらい、毎週、話していますけど。そういう発想とか、そういうふうに議論をしていけば、ぜんぜん考え方が違うなというのは、お互い、たくさんあるなというところがあるので。やっぱり、経営陣が合併に関してどれだけコミットできるかというところかなという気は、すごくしていますね。
当面の強化事業である「NFT」「Webtoon」事業の取り組み背景と具体的な戦略
手嶋:成功したか、失敗したかは、僕は定義できないですけど。僕は、合併を2回経験しているので。
水野:たしかに。
手嶋:上場企業ですけどね。合併マニアではあるので。でも、Mintoが強くなるのは想像できますね。当面でいくと、今日、ここから深掘りして聞きたいのは、新規事業の話。既存事業、クオンのIPを生み出して、スタンプを中心にグローバルに流通させていく事業と。
wwwaapのTwitterとかインスタの漫画家さんやアニメーターをネットワーク化して、ある種、広告を彼らに提供していく、UUUMみたいな立ち位置ですね。広告プロデュースしていくみたいな、クリエイターマネジメントをしていくみたいな事業をやりつつも。
リリースでは、NFTとWebtoonを強化します、と。新規事業。NFTもWebtoonもクオンで少しやりかけていたくらいな感じだとは思うんですけど。ひっそりやっていた部分もあるかとは思うんですけど。
手嶋:明確に、この二つを強化していきたいと。まずNFTでいくと、実はクオンはかなり前からやっていますよね?
水野:そうですね。2018年にNFTのプロダクトをつくったのが一番最初のスタート地点なので。当時はNFTというよりDappsと言っていましたね。
手嶋:Dappsって言っていますね。それは、シンガポール法人をつくってやっているんでしたっけ?
水野:いや、もう、シンガポール法人自体は、一旦、閉じちゃったので。今は日本法人をつくって、日本法人とタイ法人と管轄を分けてやっていますね。
手嶋:2018年につくって、1個つくって、1個当たったんですか?
水野:当たったという言い方が……。
手嶋:リリースを見ますと、月4億円って書いてありますよ。
水野:流通金額は(笑)。一応、日本だと、流通金額、イーサリアムのパブリックチェーン上の流通金額ベースだと、プロジェクトとしては2番くらいなので。当たったという言い方で、たぶん、良いんですけど。
手嶋:相対的には少なくても、当たった?
水野:なんて言うんですかね? 今までの僕らのコンテンツのつくり方と違って。コンテンツって当たった瞬間にヒットするじゃないですか。このプロダクトって、実は、今までに3年かけて、3年後に月4億円の流通額が発生したみたいな感じなんですよ。
なので、2018年のときは、流通総額がぜんぜん上がっていなかったのが、3年かけて。昔のビンテージもののNFTって価値があるよねと、3年前に遡って価値が上がってきたというのが今回の僕らの当たり方で。
手嶋:ここ1年くらいでぶわっときた感じですか?
水野:そうですね。なので、私たちが開発したサービス、『CryptoCrystal』も今、開発したあとに、めちゃめちゃ手を入れて何かをするということも、もうしていないんですけど。そこで生み出されたコンテンツ、まさにNFTが、どんどん転売されて、価値が上がっていくというのが、僕らが今やっているNFTのプロジェクトの状況です。
いわゆる、プロジェクトに対して、クリエイターとかファンとかコミュニティができてきて、そのコミュニティが3年間の時を経て、もう一回、このプロジェクトの価値を上げようぜというので、頑張って、皆がNFTを売買したり、プロジェクトを運営したりしている。いわゆる、DAOみたいな形なんですけど。
手嶋:なるほど。世の中的には、NFTがちょっとバズワードっぽくなっていて。最近は、スタートアップ産業でNFTが、いわゆるど真ん中領域っぽくなってきている。それが、バブルなのか、バブルじゃないのかみたいな。本物か、本物じゃないかみたいな。たぶん、うっすら見ている人たちからすると、それくらいの認識の領域だと思うんですけど。Minto社でいくと、合併してここを強化していくというのは、何をやっていくんですか?
水野:大前提として、Mintoのポジションをどこに置くかという議論を3人でしていたんですけど。やっぱり、僕ら、クリエイターをど真ん中において事業をつくっていくというところが本筋だよねというところに立ち返って。
クリエイターをど真ん中に置く事業であれば、当然、クリエイターエコノミー市場という市場があって、きはじめているので。クリエイターエコノミー市場の中で自分たちがどういうポジションをとっていくかというところに考え方をシフトしたというのが一つあります。
元々やっていたクリエイターの広告をコンテンツ化するみたいな事業とか。あとは、スタジオやクリエイターネットワークを問わず、クリエイターのつくったコンテンツをグローバルに広げていくというようなIP事業が、まず元々あって。それに追加する形でNFTの事業をやっていく。流れとしてはそういう順番なんですけど。
NFTの事業って、さっきも言った、クリエイターのコミュニティをつくって、コンテンツの二次流通とかも、ブロックチェーンとかNFTを使った仕組みってすごく優れているので。今までのクリエイターに対しての貢献の仕方ではない、広告での貢献とか、コンテンツを売るという貢献じゃない貢献の仕方が、おそらくできるだろうなというところで、NFTの領域を選んでというようなところが、大元でいくとそういう流れで考えていますね。
手嶋:なるほど。でも、拝見したリリースでいくと、気になることが書いてありまして。「NFT領域でのコンテンツ、プラットフォーム事業を展開していく」。コンテンツの話でいくと、今の延長線上で分かるんですけど。Minto社がプラットフォーム事業を展開していくんですね。もしかして、創業の事業LOUNGEのリベンジじゃないですか?
水野:でも、クリエイターのコミュニティの事業もやりたいなというふうに思っているので、遠からずですけど。やっぱり、僕らが今までやってきた、広告をコンテンツ化する事業も、IPを海外に広げる事業も、クリエイターとももちろん接点があって、向き合っているんですけど。
どうしても、選ばれたクリエイターというか、ある程度の実績があるクリエイターとしかお付き合いできないとか。僕らでいくと、どうしても、キャラクターの数も限られちゃうというのがあって。もうちょっと、コミュニティ的にして、これから新しくコンテンツをつくっていくというようなクリエイターの未来をつくっていく、コミュニティをつくっていくということをやっていきたいなと思っていて。
そうすると、通常の既存のコンテンツをつくりますというよりは、プラットフォーム的な立ち位置に、自ずとなっていくんだなと思って。そういったことを、今、企画・構想段階ではありますね。
Webtoon事業は儲かるのか?理想的な分業体制について
手嶋:もう1個が、Webtoon。ここも、スタートアップ業界で、ある種、急にバズワードっぽくなってきている部分も少しありますよね。
水野:そうですね。
手嶋:スタートアップ産業の人って、距離感がそもそもあったというか。自分の仕事とか、自分たちの産業とは別世界みたいな切り取り方だったと思うのが。実は、僕もそうなんですよ。他の人を揶揄しているわけじゃなくて。きっかけは、ピッコマの大型調達ですよね。
水野:そうですね。
手嶋:自分事化されたのは。「え!?そんな産業なの!?」みたいな。ピッコマを運営しているカカオジャパンが、数千億の後半くらいのバリエーションでしたっけ?
水野:そうですね。6,000、7,000、8,000とか。
手嶋:で、数百億調達したというような。おそらく、バリエーションでいくと、当然、スマートHRとか以上についているような状況で調達をして、グローバルプラットフォームを。カカオジャパンは、日本の会社というのか、韓国の会社というのか、議論はあるとはいえ、日本で生み出されたサービス、LINEと同じような感じの立ち位置ですよね。それが出てきていますという中で。
Webtoonを、ピッコマ上とか、いろんなプラットフォームの漫画、グローバルの漫画プラットフォームの中で、漫画コンテンツを提供していきたいスタートアップって、僕の感触でいくと、この1年、激増した感じで。あと、上場企業でいくと、アカツキとかが参入を表明していますという感じだと思うんですけど。ここにもMintoとして参入するわけですね?
水野:そうですね。ここは、さっき、僕らがやろうとしていると話した、元々、コンテンツの広告化の次にIP事業という形でコンテンツを生み出していくという事業で、ずっとスタンプを使ってキャラクターを生み出していくということをやっていたんですけど。意外にNFTみたいな形で、ちょっと未来というのが、自分たちのやってきたことの延長線上にWebtoonはあるなというふうに思っていて。
結局、スタンプも、プラットフォーマーと一緒に、グローバルにコンテンツを生み出していく仕事というか、コンテンツだと思っているんですけど。Webtoonは、漫画のフォーマットを踏襲しつつも、新しいコンテンツフォーマットで、かつグローバルに展開できるというコンテンツのフォーマットです。僕らも、カカオトークとずっと韓国でやっていたというのもあって。
韓国でWebtoonが流行っているというのは、この2、3年くらい、ずっとウォッチしていたんですけど。日本ではなかなかこないなと思っていたのが、やっぱりピッコマさんの成功もあって、一気にきはじめたなというのがあって。
比較的、そこは、スタジオ型ビジネスの延長線として、やるぞと意思決定は、そんなにあまり考えていないと言っちゃうとあれですけど、自然にできているかなと。元々のクオン側の発想では、そこがありましたというところですかね。
逆に、どこで差別化していくかみたいなところが、いろいろと参入していくときに一番難しいな、ポイントになってくるなと思っていて。単純に流行っているものをつくればいいんだみたいな感じだと、グローバルで考えたときに、韓国のほうが先行していますし、勝ち筋はなかなか難しいよなと思って。去年くらいから調査したり、テスト的につくりはじめたりしていたんですけど。
どこが差別化できるポイントかなとなったときに、日本から生み出されていくWebtoonって、冒頭の、漫画家さんが描くキャラクターデザインとか、ネームとか、原作とかがポイントになってくるだろうなと、僕ら自身も気がつきました。Webtoonの作業自体は、毎週1回のフルカラー連載なので、1人で描くのは無理なんですよね。
なので、基本的には分業作業でつくっていくという形で、韓国でも分業でスタジオでやっているんですけど。すべての工程を分業でやって、スタジオ化してしまうと、作品の個性がなかなか出にくいなというのがあって。そこを個性を出したり、オリジナリティを生み出したりしていくところはどこだろうというのは、結局、漫画家さんだなというところに至り。
僕らは、そのピースを持っていなかったんですけど。クオン側が持っていなかったピースをwwwaap側が持っているので、そこの漫画家さんのネットワークとクオンのスタジオ的なノウハウや仕組みをがちゃんと組み合わせて、今、Webtoonの制作をはじめているという感じですね。
手嶋:これは、まだ、制作をやっている段階で、配信はしていないんでしたっけ?
水野:世の中に出ているものはないですけど、制作はしています。
手嶋:これは、たくさん出していく感じなんですか?
水野:そうですね。たくさん出していきますね。
手嶋:単純に考えて、ピッコマみたいなプラットフォーマー。あれも、カカオジャパンから生み出されたことは、僕は、LINEが生み出されたくらいの奇跡に近いなと思っていて。カカオトークの日本版が大失敗して、ヤフーと合弁解消して、なぜあれが数年後に生まれるのかというのが、正直、謎なんですけど(笑)。謎というのは、すごいなと思うんですけど。
ああいうのが出てきて、急成長している。さっき言った、数千億後半のバリエーションで数百億中盤、調達していますみたいな状態になっていて。プラットフォーマーだから、彼らは大儲けできるんだろうなと。それは、投資家からも評価されているんだなと思うんですけれど。コンテンツを提供する人って儲かるんですか?
水野:世の中に発表されているベース、売上ベースだと、1作品で日本円で30億円くらいの売上が上がっているという作品も出てきてはいるので。ヒットすれば大きな収益になるというのは、儲かる・儲からないで言うと、儲かる作品はありますという言い方が正しいと思うんですけど。正直、ここから数年間で、Webtoonの生態系がどう変化していくか、どう進化していくかというのは、まだまだ分からないので。そこで言うと、僕らも手探りという状態ではありますね。
手嶋:どれくらい投資していくかというのは、やりながら考えていこうかなという感じですか?
水野:そうですね。ただ、今回、僕らがクリエイターエコノミーの中に力点を置いてコンテンツをつくっているというところでいくと、個人のクリエイターさんとスタジオがミックスしてコンテンツをつくるというケースは、今まであまりなくて。
手嶋:ミックスしてというのは、内部のクリエイターと外部のクリエイターが協業するんですか?
水野:そうです。なので、Webtoonをつくる工程でいくと、最初の漫画のキャラクターデザインとか、ネームを描くみたいなところは漫画家さんがやって、その後ろの工程の線を描いたり着彩したりするところはスタジオ、会社の中、うちの中でやってみたいな感じの分業をしていく。
だから、平たく言うと、元々、漫画とアニメの構造でいくと、漫画は漫画家さんが描いて、アニメはアニメのスタジオがつくるみたいなのがあると思うんですけど。それを一気にやるみたいなのがWebtoonのつくり方の、僕らが考えている中で理想的なやり方かなと思っているので。
そういう意味でいくと、クリエイターとスタジオが一緒につくっていくというケースって、インターネットコンテンツでなかなかなくて。その1個、例としては、すごく大きな取り組みで。このつくり方自体が次のコンテンツづくりの肝になるんじゃないかなと思っているので。
もちろん、Webtoonとしての大ヒットを生んでいくということも考えていますけど。その先に生まれてくるコンテンツって、Webtoonをつくったことがあるチームとか、Webtoonに関わったチームが、また新しく生んでいくんじゃないかなと思っているくらい、つくり方自体が、僕らにとっては新しい経験だなと思っていますね。
手嶋:なるほど。これは、もう、来年くらいから配信が開始される感じですか?
水野:そうですね。
手嶋:プラットフォーマーとは話し合い中? それは水野さんの得意領域なので、また、深センに行ってお茶をしながらルートを探ったりしているんでしょうね。
水野:深センには行っていないですけど(笑)。いろいろ。
手嶋:あと、この新会社はそういう言葉を使っていなかったなというのは、今、気づいたんですけど。大きい意味でいくと、クリエイターエコノミーを事業ドメインにしていくということですね。
水野:そうです。
水野氏が考えるクリエイターエコノミーの世界的潮流
手嶋:水野さんが考えるクリエイターエコノミーの世界的な潮流というのは、今どういう状況で、今後どうなると思いますか?
水野:たぶん、クリエイターエコノミーという概念がめちゃめちゃ広いじゃないですか。元々は、SNSで発展した流れで、個人で活躍できるクリエイターがたくさん増えたというところが最初だと思うんですけど。その延長線上で、インフルエンサーマーケティングみたいなものとか、B2Cとか、BtoCとか、もうちょっとクリエイター向けのSaaSみたいなものが出てきたりとか。いくつかのレイヤー構造があって。
1個のクリエイターエコノミーの市場というよりかは、いろんな市場の中から切り出したもの、クリエイターに必要なサービスとか、必要なマネタイズとかが集まっているというのが、クリエイターエコノミーかなと思っています。
なので、Mintoという会社でも、NFTを使ったクリエイターのコミュニティ的な事業をやりたいなと思っているんですけど。そこが、一番、クリエイターエコノミーっぽいっちゃ、っぽいんですけど。そこだけやるというよりかは、いわゆるエージェンシー的な。
従来のインフルエンサーマーケティング、エージェンシー的なビジネスもやりますし。あと、コンテンツを一緒につくったりするビジネスもやりますし。クリエイターにとって必要なレイヤーをしっかりと押さえていくというところをやっていくことのほうが重要だなと思っているので。
大きい意味でのクリエイターエコノミーでいくと、BtoCサービスみたいなほうにどんどんいきながらも。僕らが考えているクリエイターエコノミーでいくと、本当にクリエイターにとって必要なもの、解決したい課題に寄り添って一緒につくっていくというところをやっていこうと思っていますね。
手嶋:あと、採用はどうですか?
水野:採用は強化しています。
手嶋:それは、Podcastsの概要欄を見ていただくと分かるように?
水野:そうですね。そこにリンクを貼らせていただきます。
手嶋:主にどの職種ですか?
水野:全職種を(笑)。
手嶋:じゃあ、リンクを見てくださいということですね。今日は、クリエイターエコノミーの大注目企業になることを、僕は確信している、1月からMintoになる現クオン社長の水野さんに。タイムリーながら。僕はリリースを見てびっくりしちゃって、連絡をして、急遽、実現した収録でした。水野さん、我々のPodcastsにおいでいただき、ありがとうございました。
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